笑顔が凍るとき
昔々、今は鬼籍に入った父がよく言ったものだ。
「お前は器量も頭も悪そうだから、愛嬌だけは捨てるな」と。
今となってみれば、器量はイマイチ、頭はヒトナミ、といったところか…。
そんなワタシだが、「愛嬌は捨てるな」という父親の遺言は守りたいと思っていた。
だけど、世の中、ままならないものだ。
どんなに追い詰められても、微笑みは絶やさずにいよう、それが周りの人への心遣いだ。
と思っていたのに、どうやらそうでもないらしい。
精一杯の心遣いを土足で踏みにじる、想像力と思いやりのかけらもない輩が多過ぎる。
緊張感が足らない、とか
ヒトゴトみたいな顔をしている、とか言いたい放題。
どんな思いをして平静を保っているか、
どんな思いをしてつくり笑いをしているか、
わかろうともしないで。
何を言ってもいいと思われるほど、ワタシは軽く見られているんだろうか。
他人から軽んじられることほど、人間の尊厳を損なうことはない。
他人から軽く見られるくらいなら、愛嬌なんて捨てたほうがまし。
周りから、近寄りがたい人と思われたほうがどんなにいいか。
父親の遺言は守れないけれど、他人から軽く見られないためならば、許してくれるはず。
凍りついた笑顔のかげで、そう決心した。
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