逃亡者
さて、洋服はそこそこ着こなせるワタシでも、和服となるとさっぱりだ。
現に、1枚も持っていない。従って、和タンスというものも我が家にはない。
以前は、「婚礼3点セット」とか銘打って和タンスを嫁入り道具に調達するのが一般的だったが、今はあまりみかけないような気がする。
成人式も洋服だったし、卒業式もそうだった。今みたいに判でついたように、成人式=振袖にストール、卒業式=着物に袴、の時代じゃなかったしね。
ついでに言えば、リクルートスーツなんてのもなかった。面接試験などにはそれなりに地味な格好で出かけて行ったが、ワンピースの子もいたし、ブレザーにスカートの子、ツーピースの子もいたと思う。
今みたいに、デパートにリクルートコーナーなんてなかった。よく考えたら、20数年前は、女子大生が大量に就職活動をする時代ではなかったから、マーケットとして成り立たなかったのだろう。
昔、親から聞かされたことだが、女の子が生まれたというので20年満期の貯金をはじめた。こつこつ貯金をして、成人式の着物を買うためだ。ところが、世は高度成長時代。20年後には振袖が買えると思っていた金額では、草履くらいしか買えなくなってしまったらしい。
まぁ、それは言い訳のひとつかも知れないし、ワタシも20歳のころには家を離れていたので、欲しいとも買ってやるとも話題にすら上がらず、記念写真の1枚もなく、ワタシの成人式は終わった…。
それに比べて我が娘は、何が何でも成人式には着物だと言い張っている。同級生と再会し、カラオケに流れるのが今の成人式の定番らしい。
また、昨今は購入するよりレンタルなんだそうだ。レンタルと言えども20万とか30万円は優にする。ただ、あとのお手入れが不要というのが便利だ。特に湿気の多いマンションで、和タンスすらない我が家にとっては、レンタル以外の選択肢は考えられない。
もうあと数年すると、今度はこどもたちの結婚話が出てくるだろう。困ったことにワタシは留袖すら持っていない。このあたりでは年輩の女性が身内の結婚式に出席するときは留袖を着る。「母親が留袖を着ないなんて」と言わるのは必至だ。
だから、こどもたちには「ハワイかどこかで式を挙げて」と言っている。さすがにハワイで留袖はないだろう。国内で、何十人も招待して結婚式・披露宴をやるよりずっとリーズナブルだと思う。
もとより今は結婚式自体も挙げないカップルが多い。個人的にはそうしてもらった方が助かる。門出を祝いたい気持ちはあるが、お仕着せの結婚式の形式や演出にはいささか閉口するのも確かだ。
まぁそんなワケで、似合わない和服からなんとか逃げよう逃げようと企てているワタシなのだ。呉服屋さん、お着物愛用者のみなさん、こんなワタシをお許しください…。
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